この世界がどんなに歪んでいて、人間がどれだけ理不尽な生き物なのか、私たちは気づいているようで気づいていないのかもしれない。


 ミイは世界で一番かわいかった。
私の記憶がある限りミイは一緒にいた。
元気に走り回っていたミイも、テレビ台からうちの家具の中で一番背丈の高い棚に飛び移っていたミイも、天井裏に隠れていたミイも、太ってそんなことが出来なくなったミイも、全部全部、覚えている。


「世界で一番かわいいね。どうしてミイはこんなにかわいいんだろう」


 そんな私の口癖を、ミイは覚えているだろうか。
言い過ぎて、家族に「毎日言ってるじゃん」とあきれられるほどだった。

私の18年の人生の中で、13年も一緒にいたのだ。
ミイは私の家族で、私の姉妹で、私のハンブンみたいなものだったのだ。



 ミイ。ミイ。ミイ。

つらい思いをさせてごめんね。早く気づいてあげられなくてごめんね。病院は怖かったよね。何度も何度も連れて行ってごめんね。その分の時間を、一緒に過ごせばよかったね。もっともっと、抱きしめたかったんだよ。ミイをなでてあげたかったんだよ。そうしたらきっとミイは嫌がるんだろうけど、私はそんなミイをぎゅっとして、かわいいねかわいいねって言ってあげたかったよ。大好きだって、もっと何度も何度も伝えればよかったね。