現在の日本で少子高齢化が問題視されているのは知っている。けれど私の住む町ではそれとは反対に、元々山だった土地を開拓して、そこに家を建てた人たちがたくさん越して来た。当然人口は増えたし、その分こども達の人数も増えたのだ。

町の発展だと、大人たちが言うのを聞いて育ってきた。

 私が幼い頃遊んでいた林や竹やぶは新しい家が建った。そういえば、竹やぶの中にタケノコを取りに行った時、時たまクジャクのような鳥に出くわしたことがある。小さかった私は勝手にあの鳥をクジャクだと思い込んでいたけれど、本当はなんという名前の鳥だったのだろうか。

 冬に雪が積もると駆け出して行った原っぱにはアパートが建った。ヘビが出るからと学校の先生に行くのを止められたこともある。かわりに、綺麗に整備された公園が何個もできた。

 たくさんの木々にとまっていた鳥たちは、今は電柱にとまっている。夕方空を見上げると、鳥たちが群れになって飛んでいる時間がある。私の母親はそれを「鳥の時間」と呼んでいて、私も幼い頃からその時間をそう呼ぶようになっていた。


 今思えば、だ。今思えば、あのクジャクも、あのヘビも、あの鳥たちも。大好きだったウサギ小屋のように、どこかへ消えてしまったし、居場所を変えられたのだ。


私が気が付かないうちに、たくさんの命の居場所が、人間の居場所へと変化していた。人間が息をする町へと変化していた。そしてそれを当たり前のように受け入れて、私は生きてきたのだ。