久しぶりに通った小学校の校舎が増えていた。


車でサッと通りかかった程度だ。中までキチンと見えたわけじゃない。

私が通っていたのはかれこれ6年も前のことになる。あの時より綺麗になった真っ白な校舎は、私が通っていた時の倍近くはあったように思う。増築されるという話は風の噂で聞いていたけれど、あんなに大きくなっているとは思わなかった。


私の家を挟んで南に中学校と駅が、北にあの小学校がある。中学にあがってからはたまに通りかかることもあったけれど、高校に入学してから電車を使っての通学になったため、小学校の方面へはめっきり行かなくなっていたのだ。

6年も過ごした場所なのに、忘れるのは一瞬のように思う。実際、小学校の記憶なんてものは曖昧そのもので、私の中に今あるほんの少しの記憶さえ本当かどうか定かではない。

けれど、小学四年生の時にみんなで大切に世話をしていたウサギ小屋の位置だけは何故か今でもハッキリと思い出せる。私は動物が好きだったし、ウサギの世話をするのも大好きだった。月に一週間くるウサギ当番が毎回楽しみだったことも、ウサギに持って行く野菜を母親にねだった事も、何故だかハッキリと覚えているのだ。



今の小学生も私と同じなのだろうかと思いを馳せた時、当時の校舎がまぶたの奥にセピア色にうつった。

私の記憶が正しければ、大好きだったあのウサギ小屋は、増築された校舎によって消えていた。