振り向いた時には、制服姿の人間は目に入らなかったんだとサワは言った。

「ずっとお前のことが気になってたんだ。突然、彼氏ができたらしいって噂を聞いて、実は少し動揺してた。直接聞けばいいだけだって頭では分かってたんだけど、何となく聞けなくて……こっちも家庭教師の仕事があったし、もしその噂が真実だったら、下手に俺がお前とコンタクトを取るのも迷惑だなと思ってるうちに時間だけが過ぎていって……」
「サワ……」
「とにかくその日はそのまま家庭教師の仕事して、晩ごはんを伊藤の家でごちそうになって、それから帰ろうとしたんだ。でも、昼間のコンビニでのことを思い出して、そうしたら、どうしてもお前の顔が見たくなって、お前の家に向かうことにした。その道すがら、あの駄菓子屋の前で、お前を見つけたんだ」