「そんなのいちいち気にするなよ」

 ぼくは終始、視線を気にしてたものの、サワはどこ吹く風だ。

「でも……」

 申し訳ない気持ちが絶えず胸の中に居座っているのに、それでも優しいサワに甘えてしまっていたのは、サワと過ごせる時間のタイムリミットが刻一刻と迫っていたからだ。

 ぼくとサワとの学力には著しい差がある。同じ高校に通うことは絶対にない。つまりはサワとこうやって過ごせるのもあとわずか。この一時《ひととき》をとにかく大切にしたい。