熱さに顔をしかめ、手を押さえたまま足元に目を向けた。地面に落ちても尚、ライターの火はついたままだった。何とかしなければ。そういう思いがなかったわけではない。でも、蓋を閉じれば火が消えることをぼくは知らず、呆然と立ち尽くし、火を眺めるしかなかった。

 どれくらいそのようにしていただろう。気づけばぼくの体は震えていた。チラチララ燃え続ける火が蛇の舌のようにも見えてきて、蛇に睨まれたカエルのごとく、ぼくは全ての動作を凝固させていた。

 ただただ怖かった。禁断の箱を開けてしまったパンドラは、きっとこんな気持ちだったに違いない。