あの完璧な二人の関係を壊したかった。ぼくの大切なものを奪った由麻が憎かった。

 取り返したい。ぼくの救世主を、あの笑顔を。
 
 もちろん簡単なことじゃない。きっと短パンとTシャツでエベレストに登るくらいに無謀なことなんだろうとも思う。

 でも――それでも自分の気持ちにだけは嘘をつかないでいようと思った。

 ぼくは拳を握った。

 返せ。心の中でそう叫ぶ。

 サワの笑顔は――ぼくだけのものだ。