少し顔から遠ざけて、向きを変えて、ようやくそれがパンダの顔の模様を模しているのだとようやく気づいた途端に、可愛い、とつぶやいていた。

 ぼくはジッポの蓋を開け、見様見真似でホイールを弾いた。ライターだからそうしたんだと言ってしまえばそれまでだが、親友を失った喪失感を、どこかで紛らわしたかったんだと思う。

 ジャリという摩擦音。かすかに散る火花。意味もなくドキドキして、ぼくは二度、三度とホイールを弾いた。それでも火はつかなかった。オイルが切れているんだろうと高をくくり、何かに憑かれたかのようにぼくはそれを繰り返した。