コンビニに行くと言ったものの、そちらには向かわず、ぼくは闇雲に歩いた。そもそも財布さえ持って出ていない。とにかく一人になりたかっただけなのだ。

 歩くこと10分。吉田のお婆ちゃんの駄菓子屋の前を通りかかった。店はとっくに閉まっている。当たり前だ。駄菓子を買いに来るような時間じゃない。

 今日は珍しく不良たちの姿がなかった。ぼくは店の入り口に近づいた。入り口の手前にはガチャガチャの機械が並んでいる。懐かしくてついその本体に触れる。冷たい感触が懐かしい。ポンポンと何度か叩き、正面に表示されている商品のラインナップを見た。中身は定期的に変わっていくことは知っていた。既に見覚えのないシリーズになっていた。