「別に……会う理由なんてないし」

 ここが限界だった。話題に堪えきれなかったわたしはほとんど無意識に鞄を掴んでいた。

「ごめん。そんな話なら帰るわ」

 財布から1000円札を一枚取り出しテーブルに置いた。その勢いのまま立ち上がる。踵を返そうとした時、腕を掴まれた。ギョッとして振り向く。アクビがしっかりわたしの腕を掴んでいた。

「待ちなさいよ」

 珍しくアクビが怒っているようにも見えた。