「谷口君に向いてた目をだね、ちょこっとずらしてだね」

 由麻は目の前に平行にした手を添え、顔ごと少しずらす仕草をする。

「……ず、ずらして?」
「私に向けてみるっていうのはどうかな?」
「あの……ちょっと言ってる意味が分からない」

 由麻から体を離して、一歩二歩と後ずさる。

「アヤ、私の恋人になって!!」
「お前もか!!」

 サワといいアクビといい、もちろん恋愛は自由だし人の価値観に口出しをする気は毛頭ない。否定もしない。でも――だからって、どうしてわたしの周囲にばかり集まってくるんだ。