兄ちゃんと初デートを再現した水族館で、花穂が再び倒れた日の夕方のことだ。

 再び花穂のお母さんが花穂を病院に連れて行ったが、前回と同じように貧血や睡眠不足を疑われたくらいで、身体にはどこにも異常は見られなかったらしい。

 しかし目を覚ましたあと、また花穂の中から直前の記憶が消えてしまっているようだった。


 一体、花穂に何が起こっているというのだろう。

 意識を手放す直前には、花穂はあれだけ不審な人物でも見るかのように僕のことを見てきたくらいだ。

 だから、花穂が目を覚ましたときにどんな顔で会えばいいのか、そもそも僕と口を聞いてくれるのか不安でたまらなかったというのに。

 次に目が覚めたとき何の疑いも感じられない声色で「リョウちゃん」と呼ばれて、本当に拍子抜けした。


 花穂のこのような異変は、二度目だ。

 身体には異常が見られないとはいえ、花穂の中で何かが起こっているのは確かだ。

 それに、前回も兄ちゃんとの思い出を再現したときだった。