だけど、さっきまで嬉しそうにスマホにつけたばかりの真新しいストラップを見つめる花穂の瞳は、次の瞬間には翳りを見せた。


「……もしかして、私、以前もここに来たとき、このストラップを買ってもらったの?」

「……え?」


 ここまで兄ちゃんとのデートを再現するのみで、全くもって花穂自身に変化は見られなかった。

 もしかして、何か思い出したのだろうか?

 一瞬にして天文学部の合宿のときに花穂が倒れた光景が脳裏に蘇って、慌ててそれをかき消す。

 いや、あれは過去を再現したことが原因だと決まったわけじゃない。

 先生は、貧血か寝不足が原因だろうって言ってたじゃないか。


「……ほら、今日は私とリョウちゃんのデートを再現してもらってるから。もしかして私、リョウちゃんと、このストラップを買うの二回目なのかなとか思って」


 ああ、そういうことか。

 一瞬でも、何かを思い出したのかもしれないと身構えたけれど、そういうわけではなかったようだ。


「……そうだね」

 花穂のストラップが、今どうなっているのかはわからない。


 花穂のお母さんから聞いたのだが、あの花火大会の事故に巻き込まれたときに、以前使っていた花穂のスマホも壊れてしまったらしい。

 だから、花穂の今使っているスマホにはそのイルカのストラップはついていないのだ。