ここの水族館の餌やり体験のプログラムも以前と変わらないスケジュールで進行してくれている、というのもかなり大きい。

 とはいえ、今のところ花穂に変わった様子も見られないことから、特別何かを思い出したというわけではないようだが。


「そろそろお昼だな、そこでお昼ごはんにしようか」

 時刻は、すっかり十三時前になっている。


「そうだね。リョウちゃん、お弁当、本当に作ってきてくれたの?」

「ああ」


 そう、これが僕を一番悩ませた兄ちゃんの手作り弁当だ。

 どうやら初デートでお手製のお弁当を振る舞ったらしい兄ちゃんの弁当の中身は、生徒手帳のメモページに記されていた。

 だからメニューに関する情報までは容易に得ることができたが、問題はそこからだった。

 いつも兄ちゃんが家の手伝いをよくしてたから、今まで僕は家で手伝いを特別必要とされることはなかった。それだけに、今回のことでいかに僕が兄ちゃんが生きている間、家でぐうたら過ごしていたのかを思い知らされるようだった。


 まず、料理とメニューが結び付かない。

 ハンバーグとか卵焼きとかおにぎりとか、そういったのはわかる。けれど、回鍋肉と言われても、料理に詳しくない僕には中華料理というくらいのことしかわからなくて、イマイチピンとこなかったくらいだ。