そんな風にはにかむ花穂は、容易に僕の心をつかんではなさない。

 こんなときにドキドキしたり、ましてや嬉しいなんて思ってしまうのは、やっぱりおかしいのだろうか。

 だけど不可能だってわかってるし、こんなことを望むのは矛盾してるってわかってるけど、言葉にするならば、この時が永遠に続けばいいと思ってしまう自分もいる。

 せめて僕が兄ちゃんとして花穂の隣に立たせてもらっている間だけは、花穂とこんな風に一緒にいることを許してほしい。

 *

 ペンギンの館は今いたところからは少し離れていた。

 順路としては真ん中あたりに位置している。

 一旦さっきまでいた館を出て外を通っての移動となった。

 夏休み中ということから、さっきのアナウンスを聞いてここに駆けつけたお客さんがたくさんいた。だけど、何とか水族館側が決めていた先着順の人数内に入ることができた。

 餌やり自体は、順番にバケツの中に入っている生魚をペンギンにあげるという内容だった。花穂はご満悦のようだった。


「可愛かったね、ペンギン」

「そうだな」

 何だかんだて、ここまでは順調に兄ちゃんと花穂の初デートを再現できていると思う。