花穂ちゃんは兄ちゃんの姿を見たら、全てを思い出せたのだろうか。
二週間前、事故で即死した兄ちゃんが出てくるわけもないのに、そんなことを考えてしまう。
けれど、見た目だけなら、同じ格好をすれば僕と兄ちゃんは双子に見えるくらいに似ている。
紛らわしいから、今では意図的に兄ちゃんと髪型を変えて、あえてあまり似てないように見せているくらいだ。
そこでハッと思った。この髪を兄ちゃんがしていたように変えてみたらどうだろうって。
いつも適当に下ろしている僕の前髪を、兄ちゃんがしていたように櫛でオシャレに斜めに流したら、花穂ちゃんに何か響くものがあるかもしれない。
そう思い立って、僕はちょうど紅茶を飲み干した花穂ちゃんのお母さんに向かって口を開いた。
「あの、もう一度花穂ちゃんに会って帰ってもいいですか?」
「ええ、もちろん。花穂に、あなたは花穂のお友達だって教えてあげて?」
「……はい」
悪気なんてなかった。
もしかしたら、何かを思い出すきっかけになればいいなと思っていた程度だった。
僕は花穂ちゃんの病室に戻ると、黄色いカーテンの向こう側に顔を出す前に、手で簡単に髪の分け目を変えた。
そして、手櫛で念入りに前髪を斜めに流して兄ちゃん風にする。
それにより今まで前髪で遮られていた視界がかなり開ける。同時に、病室に入ってすぐのところに設置された洗面台の鏡に映っていた柏木将太の姿は、柏木涼太のものに様変わりしていた。
髪型ひとつで人間の印象はこんなにも変わるのだから、すごい。
二週間前、事故で即死した兄ちゃんが出てくるわけもないのに、そんなことを考えてしまう。
けれど、見た目だけなら、同じ格好をすれば僕と兄ちゃんは双子に見えるくらいに似ている。
紛らわしいから、今では意図的に兄ちゃんと髪型を変えて、あえてあまり似てないように見せているくらいだ。
そこでハッと思った。この髪を兄ちゃんがしていたように変えてみたらどうだろうって。
いつも適当に下ろしている僕の前髪を、兄ちゃんがしていたように櫛でオシャレに斜めに流したら、花穂ちゃんに何か響くものがあるかもしれない。
そう思い立って、僕はちょうど紅茶を飲み干した花穂ちゃんのお母さんに向かって口を開いた。
「あの、もう一度花穂ちゃんに会って帰ってもいいですか?」
「ええ、もちろん。花穂に、あなたは花穂のお友達だって教えてあげて?」
「……はい」
悪気なんてなかった。
もしかしたら、何かを思い出すきっかけになればいいなと思っていた程度だった。
僕は花穂ちゃんの病室に戻ると、黄色いカーテンの向こう側に顔を出す前に、手で簡単に髪の分け目を変えた。
そして、手櫛で念入りに前髪を斜めに流して兄ちゃん風にする。
それにより今まで前髪で遮られていた視界がかなり開ける。同時に、病室に入ってすぐのところに設置された洗面台の鏡に映っていた柏木将太の姿は、柏木涼太のものに様変わりしていた。
髪型ひとつで人間の印象はこんなにも変わるのだから、すごい。