はやる気持ちで、僕は去年の初デートに行ったと思われる週を探す。

 去年の天文学部の合宿の二週間前にそれらしき記述を見つけた。

 花穂とデート、と書かれた下に、水族館での花穂の様子やら何から何まで、次の日の欄にまたがるようにぎっしりと書き込まれている。


 これは、すごい。

 思わぬところから兄ちゃんの生きた軌跡を見つけた気がした。

 自分の部屋に二冊の生徒手帳を持ち帰って、再び生徒手帳を眺める。

 水族館デートのところは今夜しっかり読み込んで頭の中で予行演習するにせよ、どんなことを兄ちゃんは生徒手帳に書き記していたのかを純粋に知りたかった。


 基本的には、花穂のことや僕のことや学校であった事柄が主だった。

 こっそり書いてたのであろう日記のわりに、愚痴でまみれているわけでもない兄ちゃんの文字は、出来た人間だった兄ちゃんの人柄を表しているようだった。


 そんな兄ちゃんの日記は、夏祭り前日に僕に二人で行ってきたらと言われたという内容で終わっている。

 夏祭りとだけ書かれたその日に帰らぬ人になってしまったのだから、当然といえば当然だ。

 それより後ろは当然のように何も書かれていない、週間カレンダーの枠組みが無機質に並んでいるだけ、だと思った。