事故に巻き込まれたエメラルドグリーンのスマホは、僕と色違いで購入したもので、イルカのストラップがついている。

 だけど、兄ちゃんのスマホはここに存在しているだけのものだ。


 事故に巻き込まれたスマホは、液晶は割れ電源も入らない。

 一般的にタブー視されるスマホのデータ詮索も、不可能だ。

 デートの写真が何か一枚でも残っていれば、せめて同じ場所で写真を撮ることくらい叶うかもしれなかったのに、それさえ無理だ。


 とりあえず、前回は星に関する本が並んでいるところしか見なかったが、それこそ何か手がかりがないかと、本棚の一番下のアルバムが入っている棚を眺める。

 そこは小学校や中学校の卒業アルバムや、小さい頃の写真、そして学校で販売された修学旅行や宿泊研修のときのスナップ写真をファイルしたものが並べられている段のようだった。

 だけど、さすがに去年の初デートの写真は現像してなさそうだ。

 端から一つずつ見ていくが、案の定、何の手がかりも得られなくて棚にアルバムを戻す度に落胆していく。


 部屋に入ったときよりも重く感じる身体を起こしたとき、ちょうど目線の高さの棚に生徒手帳が並べられていることに気がつく。

 僕も持っている紺色の表紙の生徒手帳は、僕たちの通う高校のものだ。