リョウちゃんは死なないよね? 居なくならないでと涙を流している姿が、何度も脳内に再生される。


「そんなこと願わなくても……」

 そんなこと願ったって、はなから叶う見込みなんてないのに。


「だって、リョウちゃんと過ごしてきた大切な思い出さえ思い出せない私なんて、いつリョウちゃんに愛想尽かされるかわからないなって思って」

「そんなことないから」

 むしろ、愛想を尽かされる可能性があるのは、僕の方だというのに。


「あ、そうだ! 合宿から帰ったら、デートしようよ」

「えぇえっ!?」

「リョウちゃん驚きすぎ。今までだって、デートみたいって言ってたくらいなのに」


 恋心を再認識してしまった直後というのもあってなのだろう。デートという言葉に、あまりに過剰に反応してしまった。


「ほら、リョウちゃん前に言ってたじゃん。デートで水族館とか海に行ったことがあるって。そこに行きたい」

「そうなの……?」

「うん、だってリョウちゃんとデートした場所だよ? 絶対私にとって印象深い場所だろうし、何か思い出せるような気がするじゃん」


 花穂の言いたいことはわかる。

 それに僕だって、同意見だ。

 普通に考えても、花穂にとって数えるほどしかできなかった兄ちゃんとのデートで行った場所というのは、やっぱり強く花穂の中に印象づいているだろう。