いつも兄ちゃんは花穂とこんなやり取りをしてたのかと思うと、花穂への恋心は当の昔に封印したというのに、軽く妬けてくる。


 流星群が来てるとはいえ、必ずしも流れ星が見られるわけじゃない。

 実際空には日頃よりたくさんの流れ星が流れているらしいけれど、月の明るさもある中で、流れたタイミングで気づけるとも限らないからだ。


 僕は自分の中に無理矢理詰め込んだストックの一つである夏の大三角を探し始める。

 探し方が悪いのかもしれないけれど、昨日も僕は夏の大三角を見つけられなかった。

 星自体が見え過ぎて、見慣れていない僕にはこればっかりは直前の叩き込みでは身につかなかったようだ。

 むしろ、赤色の星で思いの外わかりやすかったからとはいえ、さそり座のアンタレスが比較的すぐに見つけられたのが奇跡なくらいなのだから。


 数日後に満月を控えている今日は、月明かりのせいで見えにくいとも言われてるから、それもあるのだろう。

 なかなか見つからない夏の大三角に若干焦りのようなものを感じながら、必死になりながら空に視線を泳がせる。


 そういや、夏の大三角って意外と大きいと書いてあったな……。

 それを信じて、少しでも視野を広げようと目を見張ったとき、東の空から天頂にかけて、あれかなと思われる三角を見つけた。