だけど、そのリョウちゃんの手さえあっけなく消えてしまう幻のように思えて、怖くなった。

 何をこんなに異常に怖がってるのか、自分でもわからない。


「……リョウちゃんは、死なないよね?」

「……え?」


 私の言葉に、リョウちゃんの顔が強ばるのがわかった。

 目と口を開いて、困ったように眉を寄せている。

 だけど、止められなかった。


「私のそばから、いなくならないで」


 一人にしないで、お願いだから。

 そんな意味を込めて、私を支えてくれるリョウちゃんの方へ向き直り、私はリョウちゃんの身体にしがみついた。

 リョウちゃんが、消えてしまわないように。

 いなくならないように。

 そばにいて……。


 リョウちゃんが、優しく抱きしめ返してくれる。

 何となくリョウちゃんの手が震えているように感じたのは、私がそれだけ泣いてたってことなのかな。


「……ごめん」

 一瞬、不安になった。どうして謝られたのか、わからなかったから。


「ごめんね、花穂……。でも、僕ならずっと花穂のそばにいるから。花穂が僕を拒まない限りは、ずっと」

「約束、だよ……」

 良かった……。

 リョウちゃんがずっとそばにいてくれるって言ってくれて。


 そのことにものすごく安堵して、このときの私は、リョウちゃんが謝った理由も、その言葉の意味も特別深く考えてなんていなかったんだ。