「そっかぁ。それでオリオン座はさそり座が怖くて逃げてるんだね……」

「他の説もあってね、オリオンから求愛された女神アルテミスが困った揚げ句、サソリを刺客としてオリオンへ送り、尻尾の毒針でオリオンは刺されて死んでしまうっていう話もあるんだ」

「どっちにしても、オリオンは死んじゃうんだね……」


 神話とはいえ、何だか切ない。

 オリオンに非があったのはわかるけど、死んじゃうなんて、あまりに悲しい結末だ。


「死んじゃったら、もう二度と会えないのに……」


 夜空が滲む。何だか自分でもおかしいくらいに死という言葉に過剰反応して、涙が止められなかった。

 リョウちゃんはそれに気づいて、焦ったように私の肩を抱いてくれる。


「ごめん、暗い話だったよね。あ、でもね、こういう説もあるんだよ! さそり座に接するへび使い座の医神アスクレピオスから毒消しをもらって、一命をとりとめたオリオンは日頃の行いを反省したとも言われてるんだ」

「……うん」

 へび使い座……。聞いたことがあるような気もするけれど、あまりピンと来ない。


「だから、オリオンが助かってる説もあるんだよ」

 私を支えるリョウちゃんの手が、私に泣かないでと言っているようだった。