「わ……っ!」

 遠くに見えた黄色い惑星が、当たり前なのだけどすぐ目の前に見える。思わず驚いて一歩あとずさってしまった。

 そんな私を見てなのだろう。リョウちゃんや他の部員の人に笑われてしまい、恥ずかしくなる。


「梶原さん、そんなにビックリした? あっちのも見てみて。月のクレーターが見えるよ」

 今度は園田くんに声をかけられて、彼のそばの望遠鏡を覗かせてもらう。すると、今度は何だかデコボコしたものが見えた。


「……本当」

 これが、さっきまでただの黄色い丸に見えていた月だなんて、頭ではわかっていても何だかちょっと信じられない。

 いつもは遠すぎて見えていない、本当の姿なんだ。


「もうすぐ満月だから見えにくいかもしれないけど、今日明日はちょうどペルセウス流星群が観測しやすい日になるから、流れ星が見られるかもしれないよ」


 私が望遠鏡から顔を離すと、園田くんはそう言って夜空を仰ぐ。

 流れ星か……。見られるといいな。


「まあ、星のことなら涼太に聞き? 詳しいから」

「花穂、あっちで見ようか」


 園田くんが笑みを浮かべて視線をリョウちゃんの方へ移す。するとリョウちゃんは慌てたように私の手を引いて、広い芝生の真ん中へと引っ張っていった。

 星の高原という名前の通り、頭上はまるでプラネタリウムのように星であふれている。

 二人で空を見上げるけれど、なかなか空を流れる星は見えない。