その説明が終わらないうちに、男の先生が「入るよー」と声をかけて、中へ入ってくる。


「どうだ、気分は?」

「あ、大丈夫です。すみません」

「暑かったからなー、熱中症を心配したが、大丈夫そうで安心したよ。頭を打ったわけでもないし、寝ているだけのようだったから寝かせてたけど、軽い貧血か寝不足といったところかな」

 先生は軽く笑ったあと、私に聴診器を当てて軽く診察をしてくれる。


「しんどいなら、お家の人に連絡して迎えに来てもらうこともできるが、どうする?」


 でも、せっかく来たのに……。

 去年も来た場所なら、何かを思い出せるかもしれないのに……。

 勝手かもしれないけれど、ここでおしまいにするのは嫌だった。


「大丈夫です。合宿を続けます」

「花穂、無理しないで。しんどいなら一緒に帰ろう?」

 リョウちゃんの眉が寄る。それだけ私のことを心配してくれているのだろう。


「大丈夫だよ。ちょっと朝早かったから、疲れが出ただけだと思う。ゆっくり寝たし、もう元気だから」

「でも……」

「夜は天体観測があるんでしょう? 私、星が見たいな」


 それに、あくまでこれは天文学部の合宿だ。

 メインは、これから夜間にかけて行われる高原での天体観測だ。