「バーベキューのとき、倒れたんだよ。ごめんね、体調悪いのに気づけなくて」

「ううん、大丈夫」


 そうだ。今日は天文学部の合宿に部外者の私も参加させてもらって、星の高原でお昼にバーベキューをしたんだ。

 だけど、バーベキューを食べ始めたところからの記憶が全くない。


「あの、さ。間違ってたらごめんなんだけど、何か、思い出した?」

「……え?」

「倒れる前、泣いてたから……」


 思い出したって、何をだろう……?

 私、何で泣いてたの?

 そうは言われても、泣いてたことすら全く覚えてなくて、全くもってそのこたえの手がかりはつかめそうにない。


「ごめんね。何も覚えてないの。倒れる前のこと」

「……え」

「リョウちゃんと一緒にバーベキューを食べ始めたところくらいまでは覚えてるんだけど、食べ始めた直後くらいからは何も思い出せなくて……」

「そっか」


 リョウちゃんの目がほんの一瞬だけ戸惑ったように見えた。しかし、それもすぐに優しい表情に変わってしまって、それが気のせいだったのかどうかはわからない。

 でも、絶対また心配させちゃったよね……?


「梶原さん、目が覚めた?」

 そのとき、カーテン越しに男の人の声が聞こえて、思わず肩を震わせる。


「はい」

 カーテンに向かって、リョウちゃんがそうこたえたあと、

「ここは、宿泊施設の保健室のような場所だよ。今のは、宿泊施設の関係者の息子さん。お医者さんなんだって」

 私に小声で説明してくれる。