「花穂……っ!?」

 突然頭を抱えてしまった私の耳に、リョウちゃんの声が届く。


「どうしたの? 大丈夫?」

「大丈、夫……」


 大丈夫だと、何でもないようにリョウちゃんに笑顔を向けないといけないのに。

 そうじゃないと、またリョウちゃんのことを心配させてしまうのに。

 どうして笑えないの。

 どうして視界が滲むの。

 どうして何も思い出せないの──。


 リョウちゃんに支えられながら、私はただ泣いていた。

 そんな自分が酷く情けなくて、悔しい……。

 それでも必死に全然つかめない記憶のカケラをすくい取ろうとするうちに頭痛が酷くなって、私はとうとう意識を手放してしまった。

 *

 あれ……? ここは?

 私、どうしたんだっけ……?

 目だけでキョロキョロと見回してみる。

 横たわる私の身体の上には、白い布団がかけられている。

 薄黄色のカーテン越しに真夏の明るい光を感じる一方で、部屋は何となく薄暗かった。


「目が覚めた……?」

 その声に、弾かれたように私は窓とは反対側の方へ頭を向ける。すると、私のすぐそばにリョウちゃんがパイプ椅子に座っていた。

 リョウちゃんが、少しホッとしたような笑みを見せる。


「気分はどう? 大丈夫?」

「あ、うん。あの、私……」