あのとき、リョウちゃんと話していた男子は園田くんといって、天文学部の部長で、リョウちゃんの友達らしい。

 こんな急でも大丈夫なのかと心配になったが、園田くんによると、宿は学校所有の研修センターらしく、ちょっとした人数の増減の融通がきくんだそうだ。


「ああ、そうだな。花穂は楽しみ?」

「うん、すごく楽しみ! “星の高原”ってどんなところなんだろう?」

「山の上のキャンプ場だよ。照明がほとんどないから、僕たちが住んでるところからは見ることができないような、小さな星もたくさん見ることができるんだ」


 話題を変えたこともあってか、リョウちゃんの表情がいつもの穏やかで優しいものに戻って内心安堵する。

 天文学部の合宿は、急だなと思ったけど、私はどうしてもそれに行きたいと思った。

 反対されないか心配だったけど、お父さんとお母さんは意外にもすんなりOKしてくれた。


「……私は、去年もその合宿に参加してたんだよね」


「え……?」

 

 今歩いていた並木道の途中でリョウちゃんが足を止める。


 戸惑うような、困ったような風に眉を下げるリョウちゃんを見て、後悔した。