早く安心したくて黄色いカーテンの中へ足を踏み入れる。そこにはピンク色のパジャマを着た花穂ちゃんが、ベッドの背を起こして、もたれるようにして座っていた。


「花穂ちゃん……っ!」

 良かった……!

 思いの外、顔色が良かったことにまず安堵する。


 さすがに二週間も寝たきりだったことを思えば、元の生活に戻るためにリハビリが必要になってくるだろう。

 幸い、目立った外傷がないので、リハビリにそこまで悪影響を及ぼす事はないはずだ。

 だから今すぐにとは言わなくても、また花穂ちゃんは自分の力で日々を送れるようになるだろう。

 そう、思っていた。


 人より少し大きめの、丸い瞳が僕をとらえる。


「目が覚めて、本当によかった。気分はどう?」

 ところが、目の前の花穂ちゃんは笑うことも悲しむこともせずに、表情を変えることなく首をかしげた。


「あの、すみません。どちら様でしょうか?」

「……え?」


 ふざけた様子は全くない。

 むしろ、心底疑問に思っていることが薄茶色の瞳ににじみ出ていて、僕は途端に恐怖に似た感情に襲われる。


「花穂。本当に覚えてないの? ほら、小さい頃からよく一緒に遊んだじゃない」

 花穂ちゃんのお母さんにそう問いかけられても、花穂ちゃんは僕をじっと見つめて申し訳なさそうに首を横にふる。