現に、花穂は彼女の中で特に印象深い場所に反応しているところはある。


「確かに、そうですね……」

 だから、園田先輩の言うことには一理あるだろう。


「もし参加するなら、みんなにも俺から事情を説明しておくから。また梶原さんとも相談して、返事ちょうだい」

 園田先輩はズボンのポケットからスマホを取り出すと、画面にQRコードを表示して僕に向ける。

 それを見て、アプリの連絡先を交換しようという意味だとわかったので、僕もスマホを取り出して、園田先輩と連絡先を交換した。


「ありがとう。良い返事を期待してる」

「わかりました。ありがとうございます」


 最初に園田先輩に話しかけられたときはどうしようかと思ったけれど、結果オーライとはこのことを言うのだろう。


 去年の夏。

 兄ちゃんと花穂が過ごした夏を再現できる。

 僕だけの力じゃ成し得なかった非日常の思い出に花穂を連れて行けるんだ。

 花穂はこの提案のことを聞いたら、どんな反応をするのだろう?


「……話終わった?」

 僕に気づくまで、きっと花穂はずっとこの青々とした桜の木を眺めていたのだろう。


「うん。ごめんね、長いこと待たせて」

「ううん」

「さっきの部活で一緒の人だったんだ。あ、僕、天文学部だったんだけどね、……」


 花穂は園田先輩に持ちかけられた提案を、目をキラキラさせながら聞いていた。

 これは、かなり手応えがありそうだ。

 そんな花穂の様子を見て、また一歩、前進できたような気がしたのだった。