「あのさ、ちょっと思いついたんだけど」

「何でしょう？」

「涼太のかわりに将太が天文学部の合宿に参加してよ、梶原さんと」

「え？　えぇえっ!?」


　天文学部は、毎年夏休み中に天体観測をするための夏合宿があるらしい。

　今の今まですっかり忘れていたけれど、そういえば去年、兄ちゃんが合宿だと言って二泊三日ほどお盆の頃に家を空けていた。

　確か、僕も一緒に行かないかと、当時兄ちゃんに声をかけられた記憶がある。

　結局天文学部に入らなかった僕は、部外者なんだからと断ったんだ。


　でも、なんでこのタイミングで天文学部の合宿に参加する話をするのだろう？

　そんな僕の反応を見て、園田先輩は「ああ」とおかしそうに笑う。


「もしかして知らなかった？　涼太、去年の合宿、梶原さんと参加してたんだ。うちの合宿、部員の友達も参加OKだから」

　そうだったの……？

　ってことは、兄ちゃんは去年、この合宿に花穂と僕を連れて行こうとしていたんだ。

　本当に、そこまで僕に気を遣ってくれなくて良かったのに……。

　兄ちゃんらしいけどさ。


「今の話聞いて思ったんだけど、合宿に参加して去年の夏を再現したら、梶原さんにとっていい刺激になる気がするんだ」