「どこ?」

 洒落た場所だ。せっかく写真を見せてもらっても、僕はこんな素敵な場所を知らない。


「これな、高校の中庭。すっごく綺麗だろ?」

「そうなんだ」

「入学式の日にここを通ったとき、すごく綺麗だなって思って撮ったんだ。花穂にも教えたくて連れていって、雰囲気に任せて告白しちゃったんだ」


 兄ちゃんに先を越されて、ずっと好きだった女の子を自分のものにされて、全く負の感情が芽生えなかったと言えば嘘になる。

 むしろこのとき、生まれて初めて兄ちゃんが憎らしいと感じた。

 だけど、本当に幸せそうに笑う兄ちゃんを見ていると、そんな負の感情よりも二人を応援したいと思う気持ちの方が強くなった。


 兄ちゃんとは見た目がよく似ていると花穂ちゃんにも言われていた。

 それでも花穂ちゃんが兄ちゃんを選んだのは、きっとそれ以外の点で兄ちゃんの方が圧倒的に優れていたからだ。

 勉強だって、スポーツだってできる。

 僕だけじゃなくて、誰にでも面倒見がよくて優しくて頼りになって、僕には到底敵わない相手だってわかっていたというのもあるのかもしれない。

 先を越されたと言ったが、順番はどうであれ、花穂ちゃんに選んでもらえるのは兄ちゃんだ。


「そっか。ロマンチックだね。幸せになってね」