「花穂と付き合うことになったんだ」
それが本当であるのだろうことは、兄ちゃんの口から発せられる花穂ちゃんの呼び名が呼び捨てになっていることからも、感じ取れた。
そんな……。何でそうなってしまったんだろう。
「ってか、兄ちゃん。花穂ちゃんのこと好きだったの?」
僕が平然を装ってそう聞くと、兄ちゃんは照れ臭そうに微笑む。
「初めて会ったときからなのかな? はっきりとは覚えてないけど、小さい頃からずっと好きだったんだ。将太には気づかれてると思ってたよ」
そっくりそのまま同じ言葉を返したいくらいだ。
僕だって、初めて会ったときからずっとずっと花穂ちゃんのことが好きだったのに……っ!
でも、その言葉を聞いて嫌でもわかった。
兄ちゃんにとっても、花穂ちゃんが初恋の相手だったんだってことが。
「……どっちから告白したの?」
これで花穂ちゃんから兄ちゃんに告白したって聞かされたら絶対にへこむってわかってたけど、思わず聞いてしまった。
「僕からだよ」
「へぇ。どこで?」
すると、兄ちゃんはよくぞ聞いてくれましたとばかりにニヤニヤと嬉しそうに笑いながら、僕に携帯の画面を見せてくる。
まるで絵に描いたような満開の桜の木が、丘のようになったところに一本はえている。
そして、その脇には木のベンチがある。