少し離れているというのに、目ざとく事故現場の公園を見つけてしまうあたり、花穂の潜在的な何かがその場所に敏感に反応してしまっているのだろう。


「辛い……?」

 僕が聞くと、花穂は弾かれたように僕を見る。


「ううん。あそこは、何?」

 事故現場の公園から目をそらすことなく、花穂は僕にたずねる。


「事故のあった夏祭りのあった公園だよ」

「あそこが……」


 花穂は事故に遭った瞬間のことも覚えていない。

 けど、事故に遭ったことは聞かされて知っているからか、それほど驚いた様子ではなかった。

 なるべく早く通りすぎてしまった方がいいのかと思った。


「……少し、見て行っていい?」


 しかし、花穂はそんなことを言って、さっきまで不安げに僕を引き留めた手を引いて歩き始める。

 花穂は特別何も言わないけど、何か思うところがあるのだろうか。


 目的の場所で足を止めると、花穂はお祭りのあった事故現場の公園をフェンス越しに見つめる。

 事故現場はすでに綺麗に片付けられていて、一見、ボール遊びもできる広場のついた何の変哲もない公園だ。


 かつては子どもの声が響いていたものの、事故があってからはどこか閑散としてしまった公園内。その中にどこか重々しい空気が流れているように感じるのは、きっと気のせいではないだろう。

 破れたフェンスを覆うブルーシートの前には、いくつかの花が供えられている。