そうしているうちに、電話が終わったのか先生がこちらに戻ってくる。


「ごめんごめん。そろそろクラブの方へ顔を出してくれって、クラブの活動を見に来てもらっている外部のコーチから連絡が入ったから、グラウンドに戻るわ。急で悪いけど、そろそろいいか?」

「あ、はい。僕らもそろそろ帰ります。今日はありがとうございました」


 さすがに卒業生とはいえ、僕たちに校舎内を勝手にウロウロされるのは、学校側として都合が悪いらしい。

 まぁ何かトラブルがあっては困るという学校側の意図によるものだろうし、仕方ないと思う。

 僕たちは先生と一緒に校舎の外に出て、グラウンド付近で先生と別れて校門を出た。

 この日は、結局花穂はこれと言って何も思い出せなかったようだ。

 *

 それからも僕たちは、午前中や夕方を狙って記憶探しの旅を進めていった。

 猛暑の中、毎日外に出突っ張りなのは熱中症等のリスクを考えると危険だからだ。

 それに、花穂の身体もまだ疲れやすいだろう。

 初日こそ全く何も変化のなかった花穂だが、やっぱり印象強い場所には、何かしら感じることはあるようだった。


「リョウちゃん……」


 花穂がいつもと違う反応を示したのは、記憶探しの旅三日目のことだった。