最初こそ僕が弟の方だとバレないか心配だった。だけど最初に先生が僕に対して感じた違和感を時の流れのせいにしてしまえば、そのあとは何も聞かれることはなかった。

 実際、兄ちゃんと同じ格好をしてしまえば、僕と兄ちゃんの見た目に大きく差異がないからなのだろう。

 幸いにも兄ちゃんが小六のとき、花穂とはクラスが違ったために、あまり突っ込んだことを花穂に聞いてこないことには助かった。


「お前らの学年ってあれだよな、みんな揃って南町にある廃墟に行くのが流行ってたよな」


 兄ちゃんたちが小学六年生だった頃から、もう五年も経つのに、その当時のことをパッと思い出すのだからすごい。


「あ、ありましたね。僕も行きました」


 その当時、幽霊屋敷として知られていた南町の廃墟に度胸試しとして行く子が多かった。

 あの頃、純粋に花穂に恋をしてた僕は、花穂にかっこいいと言ってもらえると思って、夕暮れ時に一人で行って帰って来ようとしたんだ。


 幽霊屋敷の中はところどころ崩れていた上に、当然照明もない屋内は薄暗かった。

 勇敢に幽霊屋敷の中に忍び込んだところまでは良かった。しかし日没が近づくにつれ、ただでさえ薄暗かった屋内はさらに暗くなり、僕は怖くて外に出られなくなってしまったんだ。