少し不思議そうに公園内を見回している花穂に、僕はジャングルジムのそばに行ってそれを手でつかむ。

 昔は高く思えたジャングルジムも、易々と一番上まで手が届いてしまう。


「ここで……」


 花穂はあまりピンと来てないようだから、きっと思い出せていないのだろう。


『ねぇ、かほもいっしょにあそんでいい?』

 兄ちゃんとジャングルジムで遊んでいたときに、そう声をかけてきてくれたことを。

 とはいえ、たとえ何かを思い出したとして、その思い出の中に“僕”はいないのかもしれないのだけれど。


「何か感じたこととか、ある……?」


 ピンと来るほどは思い出せなくても、何か思うことくらいはあるかもしれない。

 ジャングルジムに手を当てて何かを考えていた花穂にそうたずねてみたけれど、花穂は小さく首を横に振るだけだった。


「そっか。じゃあ暑いし、そろそろ次行こうか」

「うん、何だかごめんね」


 花穂は何となく名残惜しそうにしていたけれど、まわる場所はここだけじゃないから大丈夫と励まして、僕たちは公園をあとにした。



 公園のすぐそばには、幼稚園がある。

 僕と兄ちゃんと花穂の通っていたところだ。

 門の前まで歩く。だけど、門はかたく施錠されていて、がらんとした園庭を外から見られるだけだ。


「まさか誰もいないの……?」