「ショウちゃんは、ショウちゃんのままで居てくれたらいいから。もう無理にリョウちゃんにならなくていいよ。それにそんなこと気にしなくても、ショウちゃんは充分男らしいよ」

「そ、そうかな……」


 さっきまで再び劣等感に押し潰されそうになっていたのに、花穂の一言ですぐに頬が緩んでしまう。

 花穂の言葉一つ一つに踊らされているみたいで悔しいけど、実際のところ、僕は昔から花穂のことが好きなのだから仕方ないのかもしれない。


「そうだよ、この夏休み中いつも思ってた。でもこんなこと言っておきながら私、ショウちゃんが今までみたいにそばにいてくれたら嬉しいけど、前みたいにお姉さんらしくできずに、甘えちゃうかも」

「そんなの気にしなくていいよ。いくらでも甘えてくれていいから」


 本当のことを知ったら、花穂は僕のことを遠ざけると思っていた。けれど、どうやらそうではないらしい。

 それなら僕は、そばで花穂を支えたい。

 背伸びせず、ありのままの僕が、これからの花穂を支えるんだ。


「花穂が、ほんのわずかでも僕のことを必要としてくれているのなら、僕こそこれからも花穂のそばにいてもいいかな……?」

「もちろん。ありがとう」


 辛い現実を受け留め、受け入れて、乗り越えて前を向くことは、とても難しい。

 一人ならなおさら。

 それなら、二人で一歩ずつ前に向かって歩いていきたい。