そしてまるで僕の心を読んだように、花穂ちゃんは言葉を付け足した。


「あ、もちろん、リョウちゃんの姿をしたショウちゃんのことじゃないよ。夢の中でだったけど、でも会ったの」

「へぇ」

 夢の中で、か……。


「どんな夢だったの?」

「もう一緒にいられないって言われた。何もかも忘れて、リョウちゃんはずっと私のそばにいてくれるって信じ込もうとしていた私に、本当に何も覚えてないのかって、悲しそうにしてた……」


 花穂ちゃんが足を止める。

 遠目に見える背の高いフェンスは、この地域で唯一のグラウンド付きの公園のものだ。

 そしてそこは、記憶探しの旅を始めた頃、一度だけ来たことのあった、夏祭りの事故現場だ。

 僕が花穂ちゃんの方を見ると、そんな僕を安心させるかのように、花穂ちゃんは軽く微笑んだ。


「……ちゃんとあの場所でも手を合わせたいなと思って」


 花穂ちゃんとともに、事故現場となった公園のすぐそばまで足を運ぶ。 


 以前、ブルーシートで覆われていたフェンスはついこの間、工事が終わったようだ。

 今では、フェンスの一部が不自然なくらいに真新しいものになっている。


 フェンス越しに見えるグラウンドでは、小学生くらいの男の子数人がサッカーボールを追いかけていて、以前感じたような重苦しい空気はなくなっていた。