「少し、話したいんだけど……」


 花穂ちゃんは、どことなく思い詰めたような表情をしている。

 一体、どうしたというのだろう?

 花穂ちゃんに対する後ろめたさがある手前、一瞬、何を言われるのかと内心逃げ腰になってしまった。けれど、もし花穂ちゃんがまた困っているなら助けたい。


「いいよ。ちょっと待ってて。父さんたちにちょっと出るって伝えてくるから」

「……ありがとう」


 花穂ちゃんは安堵の笑みを浮かべた。

 *

 法事の格好のまま外に出るのも微妙な気がして、花穂ちゃんも家が近所だということから、お互いに着替えて出直すことになった。

 オレンジの夕陽が差し込む並木道、白いワンピースを着た花穂ちゃんの隣を歩く。


「そういえば、髪、切ったんだね」

「え? ……ああ、うん」


 そう。僕は、昨日、以前は目にかかってしまっていた前髪を、まゆ上まで切った。

 さすがに前髪だけ切るとバランスが悪くなるから、全体的に短くしたんだ。


 元々前髪も伸ばそうと思って伸ばしてたわけじゃなかった。

 何となく自分に自信が持てなくて、兄ちゃんに憧れていながらも、兄ちゃんとそっくりの容姿をこれで周囲に気づかせないようにしていた、というのが本心に近いと思う。