記憶探しの旅……?


「あ、旅って言っても、本当に旅行するとかじゃなくて。聞けば、私とリョウちゃんって、付き合う前からも幼なじみだったんでしょ? だから、今まで一緒に行ったことのある場所、全部まわるうちに何か思い出せるかなって……」


 確かに、花穂にとって思い出深い場所に行けば、もしかしたら何かを思い出せるかもしれない。

 現に、“リョウちゃん”という存在を花穂の中でわかるようになったのと同じように。

 可能性は、ゼロではない。


「明日から八月ってことは、今って多分夏休みでしょ? だから、夏休みの間にまわれるだけ」


 戸惑いを隠せない僕なんてお構いなしに、花穂は畳み掛けるように懇願してくる。

 それだけ必死ということなのだろう。


 少なくとも二人が付き合い始める前までは、何をするにも三人だった。

 いや、付き合い始めてもか。

 だから、思い出の場所巡りと言える程度には、あちこち一緒に行った思い出がある。だから、できなくはない。


 それにさっき花穂に話したデートは、数少ない二人のデートだ。

 あと、二人がデートしたといえば、事故のあった夏祭りくらいなのだから。