「いろいろ思い出して、きっと身体は花穂ちゃんが思っている以上に疲れてると思うから。おばさんも、何かあったら連絡してって言ってたし、迎えに来てくれると思うよ」

「じゃあ、先生から連絡していいかしら?」

「はい、お願いします」


 私がうなずくのを見て、ショウちゃんがそう告げると、先生は棚からファイルを取り出して電話をかけ始める。


「荷物は、そこにあるから」

「あ……」


 視聴覚室に置きっぱなしだったのであろう荷物は、私の寝ていたベッド脇の机の上にまとめられている。


「ありがとう」

「まぁ持ってきてくれたのは、園田先輩だけどね。花穂ちゃんのことずっと心配してくれてたから。僕からも記憶が戻ったことは伝えさせてもらうけど、また新学期に会ったら花穂ちゃんからもよろしく言っといてもらえるかな」

「……うん」


 園田くんは、リョウちゃんの部活友達だ。

 時々天文学部に遊びに行ったり、天文学部の学外活動に呼んでもらったりして、私も何回も話したことのある男子だ。

 不真面目そうな見た目に反して、すごく真面目で優しいんだよね。

 これまでのことを思い返せば思い返すほど、記憶をなくしていた私には、ショウちゃんや両親以外にも、園田くんや天文学部のみんなや、放送部といった多くの人に手をさしのべてもらってたんだと思い知る。


「梶原さんのお母さん、こっちに向かってくれてるって。それまでゆっくりしてちょうだいね」

 私の家への電話を終えたのだろう保健の先生が、再びこちらに戻ってくる。