「悪いのは、酒気帯び運転で事故を起こした運転手だ。兄ちゃんは、花穂ちゃんが本当に好きで大切で守りたかったから、花穂ちゃんを助けたんだよ。だから、そんな風に自分を責めないで」

「ショウちゃん……」

「それに、それなら僕だって。あの日、僕だってお祭りに誘ってもらってたのに行かなかった。もしかしたら、僕が行ってたらお祭りでまわるルートも変わって、兄ちゃんも花穂ちゃんも犠牲にならなかったかもしれない」

「そんなこと……」

「花穂ちゃんが言ってることはそれと同じだよ。ああすれば、こうすればって考えたってきりがない。あのときは、みんなああすることしかできなかったんだ」


 ショウちゃんの言ってることは間違ってない。

 確かにそうだった。

 だけど、私たちは何年経ってもあのときああすれは、こうすればと、きっと少なからず思ってしまうのだろう。


 ショウちゃんの腕に力がこもる。

 見ると、ショウちゃんも泣いていた。

 そうだよね、ショウちゃんにとってもお兄さんを亡くしたのだから。

 小さい頃からいつもリョウちゃんと一緒だったショウちゃんが、辛くないわけがないんだ。

 それなのに、ずっとそんな一面を全く見せることなく、私の隣でリョウちゃんの姿で私を励ましてくれていたんだ。

 それは、辛い現実を乗り越えて、一緒に前を向こうと思ってくれてたからなのだろう。