リョウちゃんやショウちゃんと過ごした日々のこと、お父さんお母さんのこと、学校の友達のこと、これまで私が生きてきた軌跡も。

 リョウちゃんと付き合い始めた日のことも、リョウちゃんと行ったデートも。

 そして、蒸し暑い夏の夜のお祭りでの事故も、記憶をなくした私のそばでショウちゃんが私のことを支えてくれていたことも、さっきまで見ていた不思議な夢のことも、全部。

 きっと今、ショウちゃんが私に向けて疑問に思っているであろう事柄を、私ははっきりとこたえた。


「……本当に?」

「うん。ずっとショウちゃんのことを思い出せなくてごめんね」

「いや、謝るのは僕の方だから。兄ちゃんって嘘ついて花穂の……花穂ちゃんのそばに居て、ごめんなさい」


 ショウちゃんは私の方へ深く頭を下げる。

 どうして、ショウちゃんが謝るの?


「やめてよ、ショウちゃん。ショウちゃんは、私のためにリョウちゃんになってくれてたんでしょ? 私が、リョウちゃんのことしか思い出せなかったから」

「……でも、嘘ついて恋人みたいなことをしてたのは変わりないし。怒って責められて当然というかなんというか……」

「そんな風に私は思ってないから。ショウちゃんは悪意を持って私に嘘をついていたわけじゃないでしょ?」

「そう、だけど……」