何度も突然意識をなくしては直前の記憶までもあやふやになってしまう私のことを、気遣ってくれている。

 そんなリョウちゃんを見ると、またか、と思ってしまう。

 だけど、いつもはそうだったんだと受け入れるしかないリョウちゃんの話も、今日は違和感を覚えた。


「……私とリョウちゃんは、事故に遭ったんじゃなかったの?」

 リョウちゃんは一度まゆを寄せるが、すぐに「ああ」と納得したようだった。  


「ううん。でも、花穂が意識を失う直前、学校のすぐそばの道路でガードレールと車の接触事故があったから、そのことかな……?」


 違う。それじゃない。

 だけど、何だかモヤがかかったみたいになって、すぐにははっきりと思い出せそうになかった。

 何となく腑に落ちないままうなずくと、リョウちゃんは軽く微笑んで椅子から立ち上がった。


「じゃあ、花穂の目が覚めたって保健の先生に言ってくるね」

 どうやら私は、学校の保健室で眠っていたらしい。


「え? あ、ありがとう」

 目が覚めたばかりでぼんやりしていた頭がクリアになるにつれて、さらに強くなる違和感があった。


“本当にわからない?”

 保健室の出入り口に向かうリョウちゃんの後ろ姿を眺めていると、どういうわけか突然脳内にリョウちゃんの声がこだました。


 違う。リョウちゃんじゃない。

 彼は──。