あと数人で自分の番だと言うとき、少し高い位置のそこから耳をつんざくようなブレーキ音が聞こえてきた。

 陽が落ちて、辺りが暗くなった中で響くブレーキ音は不気味で、恐怖さえあおった。

 思わず顔を上げて音の聞こえた方を見る。

 すると、言葉では言い表せないような鈍い音とともに、こちらに黒い乗用車が宙を舞うようにして飛んでくるのが見えた。


 こっちに来る……っ!

 どうしよう、なんて思う余裕さえなかった。

 地に足を縫い付けられたように動けなくて、思わずガードするように自分の手を私の顔の前に当てて、顔を背けて目をつむる。

 そんなことで、防げるわけないのに。


「花穂っ!」

 だけどそのとき、私はリョウちゃんにものすごい力で横に突き飛ばされたのだ。


「──きゃっ」


 その反動で身体を土にぶつけたのと同時に、鈍い音と人々の悲鳴が響いた。

 隣にいたはずのリョウちゃんがいた場所には、ボンネットのへこんだ車が降ってきていた。

 そのすぐそばには、変わり果てたリョウちゃんの姿があった。


「おい、大丈夫か? 救急車、あと警察も!」

「しっかりしろ!」

「息してねーぞ。脈もない……」


 そんな、そんなそんなそんな……。

 私のせいだ……。

 私が、こちらに向かってくる乗用車から自分で逃げられなかったから。

 私が、綿菓子を食べたいなんて言ったから。