それさえわからない私は、すでに忘れていることばかりなのだろう。

 だけど、リョウちゃんの揺れる瞳を見ているうちに、まるで走馬灯のように私の脳裏にある夜の出来事が駆け巡る。


 暑い、夏の夜のことだった。

 その日は、リョウちゃんとお祭りに行ったんだ。

 本当は今までのように私とリョウちゃんとショウちゃんと三人で行こうと思ってた。だけど、ショウちゃんには行かないと断られたんだ。

 ショウちゃんに断られたことは残念だった。けど、二人きりで行くことになって、思いがけずにお祭りデートをすることになったように感じて、ドキドキしたのを覚えている。


 同い年なのに頼りになるお兄さんみたいな存在だったリョウちゃんと、弟のように可愛がってきたひとつ年下のショウちゃん。

 二人とも大切な幼なじみだったけど、私はいつからかリョウちゃんに恋をして、高校に入学したときにリョウちゃんから告白されて、付き合うことになった。

 とはいえ、それからも三人で過ごすことは多かったから、せっかくだからとその日は夏祭りデートを楽しむことにしたんだ。


 私が綿菓子を食べたいと言って屋台に並んでいたときに、悲劇は起こった。

 坂道の途中にある公園ということから、私たちの目線より少し上に位置するフェンス越しに住宅街の道路が見えている。