だけどそのとき、自分の中で何かがおかしいと思う。


「あ、でも、最近はこの飴、もらってなかった気がする……」


 あんなにいつも魔法のように出してくれていた飴を、最近は全く見なかった。

 リョウちゃんはそんな私を見て、少し困ったように眉を下げる。


「花穂、聞いて」

「何?」

「花穂のために持ってた飴、今ので最後だったんだ」

「そうだったんだ。いつも本当にありがとう」

 リョウちゃんが何でそんなことを改まって話すのか、私にはわからなかった。


「飴もいつも用意してもらってばかりだし、たまには私が用意しなきゃだよね」

「違うんだ、花穂。もう、僕は花穂に飴を出してあげられないんだよ」

「……どういう意味?」


 リョウちゃんの醸し出す雰囲気に、嫌な予感だけが先走る。

 この先を聞かないといけないけれど、聞きたくないような。

 受け入れないといけないけれど、受け入れたくないような。


「……もう、一緒にいられないんだ、僕ら」

「何で! どうしてそんなこと……!」

「……本当に、覚えてない?」

「……え?」


 私に問いかけるリョウちゃんの瞳は、酷く悲しそうだった。

 私……、何か忘れてる?

 どうして自分がこの場所にいるのか、この場所に来る前はどうしていたのか。