目を覚ましたとき、私は知らない場所にいた。


 ここは……?

 一面、白い霧に覆われていて何も見えない。


 私……、一体どうしてたんだっけ?

 何も思い出せないけれど、何だかとても悲しい夢を見ていたような気がする。


 そういえば、リョウちゃんは?

 そのとき、不意に大好きな彼の居場所が気になって白い空間を見回す。


 私以外、誰もいない。

 遠くまで鮮明に見えているわけではないが、何故だかそれがわかった。

 それが悲しくてもの寂しくて、不安な気持ちに拍車をかける。

 そのときだった。


「花穂」

 私が聞きたくて聞きたくて堪らなかった、愛しい低い声がどこからともなく聞こえてくる。


「リョウ、ちゃん……? いるの……?」

 さっきまで誰もいないように感じていたけれど、気のせいだったのかな?

 できればそうであってほしいという思いを込めて、辺りを見回す。


「ここだよ」

 すると、どこからともなく私の斜め前方にリョウちゃんが現れた。


「リョウちゃん! 良かった、会えて」

「僕もだよ」

 私が駆け寄ると、リョウちゃんは優しく微笑んでくれる。

 ホッとして涙腺まで緩んでしまって、涙までこぼれてくるから厄介だ。


「泣いてるの?」

「だって……」