『って、誕生日なのに堅苦しくなってごめんね。でも、これから先何が起こるかわからないわけだし、せっかくの機会に話させてもらいました。そうは言っても、僕だってまだまだ花穂の隣に居るつもりだから。これからもよろしくね、花穂』

 兄ちゃんは困ったように笑いながら、最後を締めくくった。


 兄ちゃん……。

 決してこれを撮影したときに、兄ちゃんはこんな未来を想像できていたわけではないのに、今の花穂に必要なことを的確に話してくれていたように感じる。

 もうスクリーンに何も映し出されていないのに、花穂は白いスクリーンを見つめたままだ。


「……花穂」


 僕が席を立って、使っていない綺麗な白いハンドタオルを花穂に差し出すと、花穂はびくりと肩を跳ねさせる。

 驚かせちゃったかな、と思った。

 花穂が兄ちゃんからのビデオレターの余韻に浸っていたのなら余計に。


「……え?」

 だけど、まるで信じられないようなものを見るような瞳で僕を見る花穂から、花穂の中で何かが起こっていることを悟った。


「花穂?」

 僕はそんな花穂のそばに膝を折り、花穂と目線を合わせるようにしゃがむ。

 だけど、やっぱり向けられているのは懐疑の瞳のように感じる。


「何で、リョウちゃんがいるの……?」

 まさか、とは思ったが、花穂の口から紡ぎ出される言葉にそれは間違いではないようだ。

 この花穂の反応、水族館や海辺で見たときと同じ。いや、それ以上だ。