まるで今の僕たちの状況が見えているかのような兄ちゃんの発言に、内心ドキリとする。


『花穂には僕がいる。だから、ヤバそうだなって思ったときは、極力僕は花穂のそばにいるようにしてるつもりです。だけど、もしも僕に何かあってそばに居られないとき、それが心配です』


 まるで自分がいなくなってしまったあとの花穂を案じる姿が、今の僕たちを案じる姿に重なって、驚きを覚えた。


『辛い気持ちも悲しい気持ちも、ひとりで抱え込まないで。花穂には僕以外にも、将太もおじさんやおばさん、僕の両親だって花穂のことを心配している人はたくさんいるのだから』


 僕が花穂に言ったことと同じことだ。

 まさか兄ちゃんも同じことを花穂に思うなんて、やっぱり僕は出来損ないとはいえ、兄ちゃんと血の繋がる兄弟なんだなと感じさせられる。


『人はひとりで生きていけないから。だから、僕に何かあって花穂が辛くてもそばに居られないときは、誰か他の人にSOSを出すことも覚えてね。花穂には、幸せになってほしいから』

 花穂の頬に涙が伝う。

 花穂は、今、何を思っているのだろう。